2022年12月16日(金)に第5回分子サイバネティクス・第49回分子ロボティクス定例研究会(オンライン)を開催いたします.
今回は分子ロボティクス研究会学生委員の企画により, 微生物の進化実験の話題に加え, 生体分子のネットワーク構造とダイナミクスについて,最前線でご活躍中の先生方にご講演を頂きます.
===== <研究会情報> =====
主催:計測自動制御学会システム・情報部門「知能分子ロボティクス調査研究会」
後援:科研費学術変革領域(A)「分子サイバネティクス」
日時:12月16日(金曜日 15:30〜17:50頃予定)
場所:ZoomのURLを追って連絡いたします.
参加費:無料
参加申し込み:https://forms.gle/AFgzY8YQsTgEEJ5M6
*申し込みをされた方に12月15日(木)にZoomミーティング情報を配信します.入力されたメールアドレスを利用するため,入力ミスにはお気をつけください.
*なお、12月15日(木) 21:00までにZoomミーティング情報が届かない場合は、お手数ですが、下記<お問い合わせ>までご連絡ください.
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15:10-15:30 受付
15:30-15:40 開会の挨拶
15:40-16:30 講演1 : 講師 古澤 力 先生(理化学研究所 / 東京大学)
演題 :「微生物の大規模進化実験 ~進化の予測と制御へ向けて~」
16:30-16:40 質疑応答
16:40-16:45 休憩
16:45-17:35 講演2 : 講師 望月 敦史 先生 (京都大学)
演題 :「生命システムの振る舞いをネットワークの形だけから決定する」
17:35-17:45 質疑応答
17:50頃に閉会予定
講演1 : 講師 古澤 力 先生(理化学研究所 / 東京大学)
「微生物の大規模進化実験 ~進化の予測と制御へ向けて~」
概要
生物システムは環境変動に応じてその内部状態を柔軟に変化させ、多様な環境に対して適応・進化する能力を持つ。一方で、その過程における状態変化は任意の方向に生じるのではなく、そこには明確な拘束条件と方向性が存在する。その拘束条件を理解し、生物システムを適切に記述する少数の自由度を抽出することは、その状態変化を予測し制御する技術の開発につながると期待できる。
そこで我々のグループでは、ラボオートメーションを活用した微生物の大規模進化実験を展開している。用いた培養システムは、クリーンブースに設置された分注器とそれに接続されたマイクロプレートリーダーから構成され、16,000を超える独立培養系列を全自動で維持することが可能である[1]。このシステムを用い、様々に異なるタイプのストレス環境下での大腸菌の進化実験を行い、得られた進化株の表現型・遺伝子型を解析した[2]。このデータを適切な機械学習に供することにより、大腸菌の取り得る表現型が比較的低次元に拘束をされていること、多様な突然変異が類似した表現型変化を引き起こすことなどが見出された。
これらの結果は、複雑かつ高次元な細胞や生態系の状態変化を、比較的少数の自由度によって記述できることを示唆している。そこで我々のグループでは、選択圧にフィードバック制御を加えることにより、進化軌跡を制御する実験手法を構築し、それを用いて共生進化過程を含む様々な進化現象の解析を進めている。本発表では、こうした大規模進化実験による生物システムのデザインとその応用について議論したい。
[1] Horinouchi et al. Jour Lab Automation 19(5): 478-82 (2014)
[2] Maeda et al. Nature Commun. 11(1):5970 (2020)
講演2 : 講師 望月 敦史 先生 (京都大学)
「生命システムの振る舞いをネットワークの形だけから決定する」
概要
多くの生命現象が、様々な生体分子が関わる複雑なネットワークシステムから成っており、そのシステム全体のダイナミクスから生命機能が生まれるのだと分かってきた。しかし、生体分子ネットワークは分子間の相互作用の骨格しか与えない。その情報に加えて関数やパラメータを仮定した数理モデルを構築しなければ、ダイナミクスを決定できないと考えられてきた。これに対して私は、力学的振る舞いの全てが分からなくとも、重要な側面はネットワーク構造だけから決定できることを発見し、構造理論として展開してきた。今回は、幾つかの構造理論を紹介し、それらを用いた実際の生命現象の解明について解説する。